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わが町の路地(ろおじ)をゆく

今年も明治安田生命「関西を考える会」の小冊子をもらった。
「関西の豊かな文化・歴史そしてポテンシャルを探ろう」と1976年から毎年、異なるテーマで小冊子が刊行されてきた。
昨年は「橋」で、今年は「路地」だった。
関西では「ろうじ」と呼ぶそうだ。

「路地」といえば、「井戸端会議」を想起する。
かつて集合住宅の住民が共同の井戸に集まって水くみや炊事・洗濯などをしながら雑談していた。
井戸は住民間の利便性から集合住宅の間を通る私設生活道路の中央付近の広い場所に設けられた。
その周りには張り紙などで情報共有されていた。

わが町「平野郷」にその面影が残っていた。
平野本町通商店街から南へ路地を入ったところに「西脇口地蔵堂」がある。
その脇に手押しポンプ井戸が残っている。
今は防火用水として使われている。
人が集える広場には掲示板もある。
ここは「平野郷十三口」の一つで地蔵堂前の東西の道は環濠跡だ。
路地1.JPG
全興寺(せんこうじ)の一角にある「おも路地(おもろじ)」は、井戸のある路地空間を再現している。
土・日曜日にはベーゴマなどの昔の遊びや紙芝居が行われ、子供はもとより老若男女が集う。
路地2.JPG
私の小学校区の加美南部地域には旧家の「奥田邸」がある。
奥田家は江戸時代に「河内国鞍作(くらつくり)村」の庄屋で、付近の10ヶ村の庄屋代表を務めた。
正面の長屋門、主屋をはじめ東の米蔵2棟、西の乾蔵など7棟が1969年に国の重要文化財に指定された。
主屋は本瓦葺の庇(ひさし)の上部は茅葺となっている。
毎月第4日曜日に一般公開(事前に電話予約要、料金大人300円 )されている。
私は30数年前に小学校の社会見学で訪ねたのが最初で最後だ。
駅へ行く途中にあるが、街区の奥地にあるためにその存在を意識することがなかった。
それが最近、街区の車通りに高齢者施設ができて、「奥田邸」に通ずる路地の一部が広がった。
石垣の溝のある路地の風情が一部で失われてしまったが、住民の目に付く機会が増えて関心が高まっていくかもしれない。
路地3.JPG
「路地」とは、本来は「露地」と表記され、屋根のある建物以外の覆うものがない土地や地面のこととされる。
ちなみに建築基準法第42条で定める「道路」とは、「幅員4m(特定行政庁が指定した区域内では6m)以上のもの」であると規定されており、路地は密集市街地などでは家屋の間に便宜的に設けられた狭い道や家と家の間の狭い道、通路などのことで、「道路」とはみなされていない。

路地は車社会にあって生活するには便利とはいえないが、そこには住民の生活感や住民以外の人が入りにくい怪しげな雰囲気が漂う。
そんな路地が駅前や商店街など町の再開発で失われている。
上町台地周辺にはまだ井戸のある路地が残っている。
そこでの住宅の新築の際には建築基準法に基づくセットバックで路地が拡幅されていく。
路地5.JPG
その一方でその魅力を再発見して町づくりや観光資源として活かしていこうという取組みがある。
2002年と2003年の二度の火災で焼失した「法善寺横丁」が元の町並みに再建された。
法善寺を中心にした「法善寺横丁」は苔むした水掛不動がその歴史を感じさせ、小説などの舞台にもなり観光資源として高い。
そのため大阪の「わが町」の路地だったからだろう。
路地4.JPG
横丁から道頓堀筋に抜けるビルの間の1mもない通路(路地とはいえない)が「浮身小路」として整備され、井戸の装飾など「大正ロマンの路地」の趣を漂わせる観光資源になった。

その一方で2014年に焼失した阪急十三駅前の飲食店街「しょんべん横丁」は再建を求める意見があったものの断念された。
建築基準法では再建時には4mに拡幅しなければならず、その特例措置を受けるには借地権者全員の合意と、通常より耐火性の高い建築の義務付けでその費用負担が高くなるため、そのハードルを乗り越えることができなかった。

大阪市は防災力の向上を目指して、優先地区を指定して木造住宅密集地域対策を進めている。
どんな町づくりにも行政と住民とともに進めていくことが欠かせない。
その上で路地が失われても止むを得ない。

「路地」にノスタルジーを感じるのは、かつては遊び場などとして「路地」で暮らしてきたからだろう。
わが町の「路地」はまだ残っているし、また新たな姿になっていく。

参考:
明治安田生命 関西を考える会
http://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/kansai/index.html

奥田邸
http://okudatei.jp/

全国路地のまち連絡協議会
http://jsurp.net/roji/

道頓堀商店会
http://www.dotonbori.or.jp/ukiyo/
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