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淀川シリーズ④東淀川「大隅島」をめぐる

阪急京都線上新庄駅から国道479号線(内環状線)を東へ行くと、聖徳太子が創建したといわれる瑞光寺(東淀川区瑞光2)がある。
境内の「弘済池(こうさいち)」に架かる「雪鯨橋(せつげいきょう)」は、世にも珍しい鯨の骨でできている。
高欄は下顎の骨、貝殻のような形のは肩の骨だ。
約260年前に「太地浦(和歌山県太地町)」のクジラの豊漁祈願が叶った御礼に鯨骨18本が奉納された。
その鯨を供養してその骨を欄干にした橋が架けられた。
以来、50年ごとに架け替えられ、現在のは平成18年に架け替えられた6代目だ。
大隅7.JPG
大隅1交差点を東へ行くと、途中で道路が狭まる。
現在は駐車場などになっているが、用水路跡の名残の橋の欄干がある。
その先の淀川右岸下には「三千樋」の跡(南江口3)がある。
大隅6.JPG
785(延暦4)年に桓武天皇の命で摂津大夫・和気清麻呂が淀川と北方の安威川を南北に結ぶ運河を掘った。
安威川下流の「播磨国」と「摂津国」、長岡京や平安京の「山城国」を結んだことから「三国川」(現在の神崎川)と呼ばれた。
それまでの航路が難波経由から「三国川」の江口経由となって、江口は河川交通の要衝となり、住吉大社や四天王寺、高野山や熊野へ参詣者らで賑わった。

大桐5交差点から南へ約600m続く「せせらぎの道」は農業用水路を埋め立てて整備された。
その途中の街角に逆巻地蔵尊が佇んでいる。
かつてこの付近にあった「阪巻村」を流れていた淀川は渦を巻くほどの激流で難破して水死者が相次いだ。
1846年に水難事故による水死者供養と船の安全運航を祈願して豊里大橋付近に建立された地蔵が、1923年に現在地に安置したという。
大隅5.JPG
「せせらぎの道」の東方に鎮座する大隅神社は、応神天皇の「大隅宮」の伝承地だ。
その没後の宮址に創建されたといわれ、この地の産土神として尊崇されてきた。
淀川が氾濫した際に漂着した賀茂明神の御神体を合祀して「賀茂神祠(かものみやしろ)」と改称された。
1871(明治4)年には応神天皇を主祭神とした大隅神社と改称した。
明治末期には近隣の神社が合祀され、その町会が持ってきた狛犬が本殿前に5対並んでいる。
大隅3.JPG
「せせらぎの道」の南端には「乳牛牧跡」の碑がある。
律令制下、宮内省典薬寮所属の牧で、乳牛を飼育したことから「乳牛牧(ちゆうしまき)」と呼ばれ、牛を飼育し、牛乳や蘇、酪を貢納したという。
大隅4.JPG
大澤寺は1646年に開創された。
大坂夏の陣で徳川方に味方した沢田太郎左衛門はその恩賞として「平田の渡し」を含む淀川16か所の渡船権利を与えられた。
淀川・豊里大橋南詰の堤防上に「平太の渡し」の碑がある。
1676年頃に始まった「平田の渡し」は1907(明治40)年に大阪府営、1925(大正14)年に請負制度による大阪市営、1948(昭和23)年に大阪市直営となった。
船頭が竿と櫓を使う手漕船から1960(昭和35)年に発動船が導入され、最盛期には1日3000人の乗客と670台の自転車を運んだ。
1970(昭和45)年の豊里大橋の開通で淀川最後の渡船であった平田の渡しの歴史に幕を下ろした。

内環状線沿いの大宮神社は安閑天皇を主祭神としている。
『日本書紀』には535年に「牛を難波大隅嶋と媛嶋松原に放て」と記されており、安閑天皇によってこの付近の土地の発展がもたらされたという。
淀川の改修工事前までは社殿は旧淀川の右岸堤に面した古木茂る厳かな森で、旧淀川を上る船の燈台の役割を果たしたという。
淀川の改修で現在地に遷座して、氏地の大半は川底に沈み、氏子は新淀川両岸に分かれることになった。淀川左岸の大阪市旭区大宮の地名はその名残だ。
また境内には聖徳太子を祀る摂社(写真右手)がある。
大隅2.JPG
「豊里」は聖徳太子が四天王寺建立の候補地に挙げたことから、天王寺庄という地名が付けられていた。
農産物の豊かな里として名付けられた説や、聖徳太子の別名豊聡耳から取ったとする説もある。
大阪市域拡張で淀川両岸とも東淀川区に属し、「豊里町」と命名された。
1942(昭和17)年に左岸は旭区となったが、「豊里町」の町名は残った。
1971(昭和46)年に旭区内の町名変更に伴って左岸は「太子橋」「大宮」などに変更されたが、何れも聖徳太子のゆかり地名だ。
その架け橋となっているのが豊里大橋だ。
大阪市では1970(昭和45)年の建設当時初めての本格的な斜張橋で、橋長は561.4mある。

参考:
ブログ版『大和川水紀行』<淀川シリーズ①赤川鉄橋とワンド群>
http://fuji-u.blog.so-net.ne.jp/2013-09-28
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